浦和地方裁判所 昭和55年(ワ)1277号 判決
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【判旨】
二2 被告はなは、更に、本件二、三の土地を昭和四八年八月一一日贈与を受けたと主張するので検討する。
<証拠>によると、昭和四八年原告が、訴外八代ともえとの女性関係の疑いをもたれたことを原因として夫婦間に強い紛争を生じた結果、原告は被告はなからの執ような要求に屈し、右の紛議のわずらわしさから逃れたいと考え、同年九月一八日右各土地を含むとみられる「埼玉県蕨市塚越一の一六の一二にある川島守正所有の土地一八二坪‥‥を埼玉県蕨市塚越一の一六の一一の地つづきで西側から東側へ半分」を被告はなに贈与するメモ書き様書面(乙第一号証)を作成しこれに拇印を押し(更に同月二四日右八代ともえその他の女性との不貞行為は絶対にしない旨、右約束に違反したときは川島家の全財産を被告はなに与える旨の念書(乙第三号証)を作成し)、右贈与(但し、登記簿上は同年一一月一日付贈与)を原因として、同月七日本件二、三の土地につき原告から被告はなに所有権移転登記がなされたことが認められるから、原告は被告はなに、右各土地を贈与する旨の意思表示がなされたものというべく、右認定に反する原告本人尋問の結果の一部及び甲第二六号証の記載部分は直ちに採用できない。
3<省略>
三<省略>
四1 原告は、前記二の2において認定した本件二、三の土地についてした贈与の意思表示は原告の真意にもとづかないものであり、被告はなもこれを知り又は知り得べきものであつて無効であると主張するので検討する。
原告が、被告はなに対し、右土地を贈与する意思表示をした経緯は前記認定のとおりであり、<証拠>によれば、右の趣旨を記載した書面は、一時的な便宜的手段として、メモ用紙を利用して走り書きに近い程度に記載したものであり、印章によらず拇印によるもので、贈与の書面としては極めて簡単であり、その記載の上では対象地の特定も不十分であり、その面積と登記上の本件土地の地積とも一致しないなどの点がみられるうえ、右贈与書面作成の動機となつた前記念書(乙第三号証)に記された八代ともえとの関係による被告はなに対する不貞行為は明らかでない(<証拠>によれば、右不貞行為があつたとは認め難い。)にもかかわらず、原告が表面上これを一応肯定し、これを前提として、被告はなの受けた精神的苦痛に対しこれを慰藉する旨記載したものであり、更に、続いてその約束に反し更に不貞行為をするときは原告の全財産を被告はなに贈与する旨を約する念書を作成するなどの事実からみて、原告が被告はなに対してした右贈与の意思表示は、原告が妻である被告はなをともかくもなだめるため表面上被告はなの要求をひとまず容れることにして右贈与を約する書面を書いたにすぎないもので、原告に真実右贈与をする意思はなかつたと認められるところ、<証拠>により、被告はなもまた、右のようにすべて被告はなの要求を受け容れた贈与が、夫婦間の一時的な便宜のためになされたもので、真意からの契約であつたものでないことを知り(むしろ、これを利用し、意図的に原告の不動産をできるだけ娘まさ代及び自己名義に所有権移転登記をして事実上自己及び被告まさ代の財産としようとした)か、少くとも、右のような夫婦間の紛争の結果、程度を超えた財産贈与を夫婦間で約束するのは、実体的意味とは別の夫婦間特有の情緒な意味を持つにすぎないものであることを知り得たものと認めるのが相当である。それならば、原告が被告はなに対し本件二、三の土地についてした贈与の意思表示は無効であるといわねばならない。
(渡辺卓哉)